アルバム『Be The Cowboy』で世界の心を奪ったミツキ、封印していたライブ活動を解禁! カムバック・シングルを携え、再び世界をそのクリエイティビティで包み込む

アルバム『Be The Cowboy』で世界の心を奪ったミツキ、封印していたライブ活動を解禁! カムバック・シングルを携え、再び世界をそのクリエイティビティで包み込む - rockin'on 2021年12月号 中面rockin'on 2021年12月号 中面

ミツキが帰ってきた。と言っても彼女の場合、音楽業界の慣習として新作リリースのタイミングがやってきた、というのとは違う。生きることの葛藤や不安を多角的な視点とサウンドで表現したアルバム『Be The Cowboy』が絶賛されたのち、2019年9月のニューヨーク公演を最後に無期限でライブを休止することを発表していたのだ。

5年以上休みなくツアーを続けていた彼女は当時、「また人間になるときが来た」とコメントしている。テーブルやイスを使う彼女の演劇的なステージは非常にパフォーマンス性の高いもので、そうしたフィジカルなショーを続けるのは並大抵のことではなかったのだろう。ツアーを休むという彼女の選択は同業のミュージシャンたちからも支持されたが、すべての表現に全力で取り組むミツキにとってはなおさら、創造性を取り戻すために休息が必要だったと思われる。

カムバック・シングルとなる“Working For The Knife”は、そんな充電期間で溜めたエネルギーがクラッシュするような鮮烈な1曲だ重々しいシンセの音色で幕を開け、ピアノとギターが思慮深く重なっていけば、ミツキが物憂げに歌う――《すべての映画の冒頭で泣いてしまう/わたしも物作りをしていたかったからかもしれない》。彼女いわく「夢を持っていた子どもが成長して仕事を持ち、いつの間にか置いてけぼりになることについての曲」とのことだが、音楽業界のルーティンに翻弄された彼女自身の経験が反映されているのかもしれない。

Zia Angerが監督を務めたミュージック・ビデオも、下着姿のミツキが観衆のいないホールで全身をよじらせながら歌い踊るパワフルなもの。この生々しい身体性と感情表現がミツキだった、とあらためて思い知らされる。

ミツキは同曲について「自分の人間性を認識しているとは思えない世界と対峙する」ことだとも語っており、併せて大規模なツアー日程も同時に発表した。彼女は再び、そんな残酷な世界に創造性とともに全身で立ち向かっているのだ。また、ミツキの無二の表現から目が離せないときがやってきた。 (木津毅)



ミツキの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』12月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。

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