トレント・レズナー、リル・ナズ・Xとの大ヒット曲「コラボ」について初めてコメント+NINと2019年ポップ・シーンの興味深い関係性

トレント・レズナー、リル・ナズ・Xとの大ヒット曲「コラボ」について初めてコメント+NINと2019年ポップ・シーンの興味深い関係性 - Panorama 2017Panorama 2017

リル・ナズ・Xが“Old Town Road”で史上最長の19週間も全米シングルチャート1位を獲得したけど、一番驚いているのはトレント・レズナーなんじゃないかと思う。この事についてどう思っているか気になって、時々グーグル検索してみたりしたけど、コメントは見つからず。そんなとき、“Old Town Road”がカントリー・ミュージック協会賞(CMAアワード)の「Musical Event」部門にノミネートされた。



それを受けてトレント・レズナーが初めてコメントした!


アッティカス・ロスとの写真をカウボーイの格好に合成して「新しい世界、新しい時代」と(笑)。つまり、面白いと思ったということだろう。

リル・ナズ・Xは、ナイン・インチ・ネイルズのことを全く知らなくて、オランダのビート・メーカーがNINの“34 Ghosts IV”をサンプリングしたものをネットで見つけて、それを30ドルで買ったというのは有名な話。しかし、クレジットにはしっかりとトレントとアッティカスの名前が入っているので、NINはなんとキャリア初の全米シングルチャート1位も獲ったことになる(笑)。

ただ、リル・ナズ・XがNINを知らなかったとしても、彼らの曲がサンプリングされた曲を選んだところにセンスがあるし、しかも「孤独な自分とこのサウンドが合ってると思った」というのも正しいと思う。リル・ナズ・Xはなんとなくカントリーっぽい曲だとは思ったそうだが、カントリー・ミュージックについてよく分からないまま、グーグル検索してこの曲を作ったというから本当に凄い。

だが、ビルボードは同楽曲をカントリーと認定するには要素が少ないとしてカントリー・チャートに入れなかった。差別だと言われているが、今回のCMAアワードでもメインのカテゴリーにはまったくノミネートされていなくて、巷では批判されている。

NINとカントリーと言えば、ジョニー・キャッシュが“Hurt”をカバーしたことを思い出してしまうが、以前ジョン・ブライオンが本当に良い曲というのは、どのようにカバーしても良い曲になる、と言っていたことも思い出す。


ご存知のように、最近マイリー・サイラスもNINをカバーしている。近未来を舞台にアポカリプス的な世界を描いたNetflixの『ブラック・ミラー』で、彼女が演じた空虚なポップ・スターが“Head Like a Hole”を替え歌にして披露しているのだ。


これもハマりすぎていたと思う。トレントも笑えると思った、と語っていた。

リル・ナズ・Xとマイリー・サイラスという2019年の超メインストリームでNINの曲が使われたのは、興味深く、偶然とはいえ必然とも思える。というのも、トレントの曲にはアポカリプス的要素がふんだんにあるから、今の空気感にぴったりだと思うのだ。

また、トレントは『ゴースツ I – IV』を「デイドリームのサントラ」として作ったと言っていたが、デビッド・フィンチャーが『ゴースツ I – IV』を『ソーシャル・ネットワーク』製作中にずっと仮のサントラとしていたことがきっかけで、結局NINがサントラを手がけることとなり、その後オスカーまで授賞している。現在もハリウッド映画のサントラを手がけ成功し続けているから、それも彼の曲の素晴らしさを象徴しているように思う。

アポカリプスという意味では、10月にHBOで放送が開始する『Watchmen』のサントラもNINが手がけるそう。予告編だけでも怖すぎる。


しかし、超驚きなのが、最近なんとピクサーアニメ、そのタイトルも『Soul(原題)』(=魂)のサントラを手がけることが発表されたこと!

監督は『インサイド・ヘッド』や『カールじいさんの空飛ぶ家』などのピート・ドクター。来年6月公開予定のこの作品は、ジェイミー・フォックスが声で主演を務める。ジャズ・ミュージシャンになることを夢見ていた中学校の先生の魂が体から抜けてしまい、その魂が新しい赤ちゃんに移ってしまう前に取り戻さなくてはいけない、という話らしい。なんとなく『インサイド・ヘッド』を彷彿とさせる。すでに発表されているイラストを見ると、柔らかでドリーミーなパステル調で、トレントのこれまでの世界とはまったく違うのだ。


大挑戦になると思うので、とても楽しみだ。トレントはお子さんが4人もいるので、ぴったりの時期だったのかもしれない。

CMAアワードは11月14日発表。果たして受賞となるか!
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