パスピエのファースト・フル・アルバムとなる今作。ゾクゾクするようなメロディ、ファニーな魅力たっぷりに乗っかる歌詞、跳ねまわるキーボードを中心に一丸となるバンド・サウンド。ポップを突き詰め、バンドとしての進化を求め続けたパスピエの旬な名曲たちがズラリと揃う、文句なしの一枚。これまでも初期段階から個性あるクオリティの高い楽曲を生み出して来た彼らだが、もうひとつ欲しかったのはバンドとしての説得力だった。そんな問題もわかりやすい言葉と熱量で超えてみせる。例えば“名前のない鳥”における《たとえばわたしが地図から消えても/見上げた青空が涙になっても/なくした名前を探しにゆくから/ここにいるよと歌っているから》と歌う切実な想い。“ON THE AIR”での《日常に少しのメロディーを/明日のキミには雨傘を/届けてくれ ラジオ》なんて素直な想いも聴き手に嬉しいもの。ラストの“カーニバル”はドラマチックかつ大胆な曲展開を見せるスケールの大きなナンバー。さあ、パスピエ・ポップを存分に演じきる演者は揃った。これからのライヴにも期待できそうだ。(上野三樹)