ロックな戦略を持つエレポップ姫

ホールジー『バッドランズ』
発売中
ALBUM
ホールジー バッドランズ
8月にリリースされたデビュー・アルバムが、EP曲やリミックスのボーナスも加えられた全22トラックというヴォリュームで日本盤となって発売である。今時、彼女くらい自覚的に自らをアイコン化し、マイノリティの叫びを代弁しようとするアーティストも珍しいが、多様化を辿っているように見える世の価値観の裏側には、まだまだ放たれるべき声があるのだな、と思わずにはいられない。重厚なエレクトロ・ポップを歌うホールジー(アーティスト名は本名アシュリーのアナグラムだ)は、本作のタイトルやニュージャージー州生まれということからも、スプリングスティーンのイメージを喚起するところがある。生活の情景を描写することで時代と環境の闇を浮かび上がらせるという表現スタイルについても然りで、古いアメリカ像を糾弾しつつ《ビギーとニルヴァーナを聴いて大きくなった私達はニュー・アメリカーナ》というあまりにもポップなイメージは、アフリカ系の父と欧州系の母を持つ彼女の自我からも強固に裏付けられている。ロックで大胆なマインドが頼もしい。(小池宏和)
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